ジョン・ダウランド:流れよ わが涙
2006年 12月 20日
先日、演奏会で、メランコリーの陰り漂う「流れよ わが涙」など、16世紀エリザベス1世の御世に活躍したジョン・ダウランドの声楽曲やリュート音楽を聴いて、彼の作品が有している「闇」や「翳り」といったものは、時代を超えて現代人にも充分合い通じる普遍性を持っているとあらためて感じいった次第であります。ただ、この人、根は結構、おしゃべりで明るい御仁だということを何処かで読んだ気がいたします。ダウランド=涙=翳りといったイメージは、ひょっとして、「泣ける音楽を作曲します」という風に、売り込まんがための一種のイメージ戦略だったのかもしれません(笑)。
特に昨今の癒し系音楽ブームに加え、あのスティングまでが、彼の歌曲を取り上げたアルバムをなんとグラムフォンからリリースするに至って、古楽ファンやクラシックファンのみならず、ダウランドの存在を広く知らしめることになったのではないでしょうか。スティングのダウランド・アルバムを過去のコンソート・オブ・ミュージックやエマ・カークビーのアルバムなんかと同列に扱うのは、ちょっと気が引けるのですが、それでも、彼の声質とダウランドの音楽性が意外にもマッチしていると感じております。一度は、話のタネに聴いてみても損はしないと思いますね。
なお、ダウランドと聴いて、20世紀の音楽で忘れてはならないのは、ベンジャミン・ブリテンでしょう。彼は、盟友ピーター・ピアーズと組んで、ダウランドの歌曲を取り上げリサイタルを開催するほか、彼の「ラクリメ-ダウランドの歌曲の投影」や「ノクターナル」などでダウランドの歌曲を引用するなど、ブリテンをして、何か強くひきつけるものgを感じ取っていたのでしょう。私は、ブリテンとダウランドの間には何かしら絶望に近い暗い闇の世界といった点で共通項といったものを感じざるを得ないのであります。
このあたりについては、またいずれ。
さて、ダウランドについて簡単に触れておきます。
ダウランドは英国ルネサンスを代表するリュート奏者であり、リュート音楽の作曲者。
ダウランドの創作活動の中心はリュートのための作品だったのですが、彼の80曲余りのリュート独奏曲は生前にほとんど出版されなかったのですが、一方、リュート伴奏付きの歌曲は、大部分が4巻の歌曲集として生前に出版されることになりました。それらの歌曲は、独唱だけでなく、重唱や器楽伴奏付きででも演奏できるように書かれており、当時としては画期的な作品であったようです。
彼の作品は、一貫したメランコリックさが特徴。特に、「流れよ、わが涙」は深い哀愁を感じさせ、当時ヨーロッパ全域で広く知られた流行歌となりました。
なお、話は変わります。以前、江戸時代、長崎の出島で演奏された音楽というCDがリリースされたことあるのですが、このCDでも、ダウランドの「流れよ、わが涙」が収録されていたと記憶しております。
遠く、故郷から離れて、長崎の出島に赴いたオランダ人商人なんかも、ダウランド作品を聴いて、涙を流すことなんて、ひょっとしたら、あったかもしれませんね。
さて、ダウランド作品の推薦盤ですが、先ず、アントニー・ルーリー指揮&コンソート・オブ・ミュージックによる 《ダウランド・リュート歌曲集》のL'OISEAU-LYRE盤です。私がご贔屓にしているエマ・カークビーの透明で伸びやかな歌声が聴けるというのがうれしいのですが、重唱を多用していることや、リュートではなく、ヴィオールを伴奏に使っているところなどが、他のCDとは違うところであります。
ついで、波多野睦美さん&つのだひろ さんによる「悲しみよ とどまれ」というタイトルのCDでしょうか。初めて波多野さんの歌声を聴いたのがこのアルバムだったのですが、初めて聴いたとき、日本人が歌っているとは到底信じられなかったスムースな発声。優しく暖かみのある歌唱が非常に印象的。

