イングランド民謡「グリーンスリーブス」
2006年 12月 14日
エリザベス1世の時代、イングランドとスコットランドの国境付近の地域で生まれたといわれているのですが、もう一つ定かではないようです。すでに当時から多くの人々に愛されていたようで、シェークスピアの「ウィンザーの陽気な女房たち」の中でもこの「グリーンスリーブス」のことが書かれていますね。この歌は16世紀半ばまで口頭伝承で受け継がれ、17世紀には英国においてイングランドで知らぬ者がいない超有名曲となったようです。
リュート用の楽譜も既に17世紀、ロンドンで出版されているとのこと。落ちついた、静かな感じの曲であります。
こういった、民謡の歌詞は、地域によって様々で、また時代によって移り変わっていくもので、ご多分に漏れず、この曲でも何種類も確認されているようです。そのなかでも、最も知られている歌詞は「我がグリーンスリーブス夫人の歌」でしょう。「グリーンスリーブス」とは緑の袖の服を着た女性のことで、当時、「緑色の袖」には不倫という意味があり、独身貴族が既婚の婦人のことを歌ったものといわれています。なお、英語でグリーンモンスターとは、嫉妬深い女性のことを指すようであります。
この不倫の歌の旋律は、クリスマス・キャロル「御使いうたいて」にも使われています。何たる皮肉でしょうか(笑)。シェイクスピアは「ウィンザーの陽気な女房たち」第2幕第1場で、フォード夫人にこうしゃべらせています。「あの男は口と腹とでは大違い、賛美歌と流行り歌の'グリーンスリーブス'ほどにも違う」と。
なお、英国では広く親しまれた有名曲だということで、この旋律は、様々な曲の主題として用いられています。
先ず、思い出されるのが、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズによる「グリーンスリーブスの主題による幻想曲」でありましょう。それはそれは美しい曲で、マリナー&アカデミー室内管によるCDを愛聴したものであります。
次いで、グスタヴ・ホルストの「セントポール組曲」でしょうか。弦楽合奏の為の曲で、全曲通しても15分に満たない曲ですが、4楽章にグリーンスリーブスの旋律が登場してまいります。私が持っておりますCDはリチャード・シュトゥット/ボーンマス・シンフォニエッタによるナクソス盤。ホルストといったら、何と言っても「惑星」ばかりが有名なのですが、この曲もグリーンスリーブスの旋律のおかげで親しみやすい曲となっています。一度トライされてはどうでしょうか。ナクソス盤は演奏のみならずカップリングも上々。ちなみに、この4楽章は、同じホルスト作曲の吹奏楽の為の第2組曲の終楽章のものを弦楽版に直したそうですが、私は未聴。
