林光:『舞台のための歌曲集「彼女と-彼らと」GALA』@神戸文化ホール
2006年 12月 02日
神戸を活動拠点として活躍しているオペラ歌手、濱崎加代子さんの音楽活動25周年記念リサイタル ~今宵 祝祭のスペインへ~(12月1日、神戸文化ホール・中ホール)に、友人に勧められて出かけて参りました。出演:濱崎加代子(ソプラノ)
小梶由美子(ピアノ)
特別出演:田原祥一郎(テノール)
◆プログラム
〔一部〕
ファリャ:7つのスペイン民謡
オペラ「カルメン」より ハバネラ、セギディリアほか
〔2部〕
林光:『舞台のための歌曲集「彼女と-彼らと」GALA』
特別出演の田原祥一郎さんもお歳を召されたなあという実感も含め、第一部については、正直のところあまり感心できる出来ではなかったのですが、2部はうって変わって、斬新で意欲的で面白かったですね。
林光さんの『舞台のための歌曲集「彼女と-彼らと」GALA』という作品は、シュールレアリズムの女王と呼ばれたガラをめぐる三人の男、フランスのシュールレアリスムの詩人ポール・エリュアール、同じくドイツ生まれのシュールレアリズムのドイツ人画家マックス・エルンスト、そしてスペインのサルバドール・ダリ(スペインの画家)の「ひとりオペラ」であります。だいたい内容は次のとおり。
多情多感なガラは1982年6月10日、88歳でポルトリガの自宅でなくなる。ダリは最後の瞬間までつきそったとのこと。ガラはロシアのカザンの生まれ。18歳の時パリに出る。
M1「笑う煙」。ガラは「私は煙だ」という。男にとって捉えどころがないということなのでしょう。三文オペラで4役をこなし、関西二期会でも場数を踏んできた濱崎さんだけあってこういうのはお手の物のようですね。役にぴったり。声も魅惑的。
M3「ガラという祝祭の神話」。詩人エリュアールと、スイスのダヴォスのサナトリウムで出会う。10代で恋人となり、結婚する。エリュアールは自由の為に戦った抵抗詩人として知られているのですが、ガラにとって男としては不満であったようですね。結婚生活は破綻。それでも彼は愛の詩を綴るのであります。『ぼくはきみと別れた。だが、愛はまだぼくの前を歩いていた』。
M4「愛と絶望」からM7「変化」。ドイツ人天才シュールレアリストの画家マックス・エルンストの登場。夫への飽きたらない感情がガラをエルンストヘ走らしたともいえるのですが、夫エリュアールも半ばそれを公認。
M8「男友達」M9「人は休みなく愛している」。「多情多感は人間の本性よ」と濱崎さんはのびのびと人間賛歌を歌うのであります。
M10「愛の記憶」からM13「悲しみよ今日は 悲しみよさようなら」。ここで、スペインのシュールレアリズムの旗手ダリの登場であります。ダリは作品だけでなく全生活が超現実的。それにガラが魅かれたのであります。二人が出会うのは1929年の夏で、ガラは夫のエリュアールとその友人たちと一緒にスペインのカダケスに滞在中のダリを訪ねます。ダリはたちまちガラの虜になります。ダリはガラの背中に魅せられてしまう。ダリ25歳、ガラ35歳である。ガラにささえられたダリの仕事は順調に進み、その多彩な才能は開花することに。ダリは「私が画家でいられるのはお前のおかげなのだ」と告白します。「私の生涯における星輝く原野の巡礼」とまで言わしめます。ソプラノが冴え渡ります。
まあ、作品の斬新さに助けられたところも無きにしも非ずかもしれないのですが、濱崎さんも、よく作品を理解して歌っているのがわかりました。
なお、この林光さんも会場にお見えになっておられ(良く似た方がおられるなあと思っていたのですが)、公演終了後、紹介されて、ステージで濱崎さんなどとともに拍手喝采を浴びておられました。
なお、3月23日(金)かつしかシンフォニーヒルズ「アイリスホール」でもこの林光作品が同じく濱崎さんのソプラノで公演されるとのことです。少なくともこの林光さんの一人オペラは聴く価値ありです。シュールレアリズム大好きな人、ダリ命という人のみならず、結構楽しめますよ。きっと。
ところで、マックス・エルンストやダリ、特にダリの絵にガラが度々登場します。ついでと言ってはなんですが(笑)、東京で結構大規模なダリ展やっている最中ですし、このあたりアートネタでちょっと書いてみることとします。乞うご期待。

