シューマン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調Wo023〔遺作〕
2006年 11月 01日
デュッセルドルフ時代の創作で目立つのは、これまでになく弦楽器、特にヴァイオリンに目が向けられていることであります。ヴァイオリン・ソナタ3曲、幻想曲、バッハの無伴奏組曲の編曲と続き、その最後に行き着くのがヴァイオリン協奏曲であります。1853年春のデュッセルドルフ音楽祭で、ヨアヒムの弾くベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を聴いて深い感銘を受け、同年9月から10月にかけて作曲したのが、ヴァイオリン協奏曲ニ短調と幻想曲作品131。両曲ともヨアヒムに初演を依頼したのですが、彼は取り上げようとはしませんでした。幻想曲は翌年出版され、ハノーファーで初演されたのですが、協奏曲は、旧全集出版の際にも、ブラームスとヨアヒムが編入に反対し、結局ヨアヒムの遺品とともにお蔵入りとなったのであります。
年は過ぎ、なんと1937年にシュプリンガーがこの曲の楽譜を発見し、シューネマンが校訂の上出版。大いに話題となり、翌1938年2月ロンドンで、ヨアヒムの血縁の女性ヴァイオリニスト、ダラーニによって行われるのであります。なんと、作曲から80年後であります!
続いてメニューインがアメリカ初演を行おうとしたのですが、ナチス政府が妨害し、一足先にクーレンカンプにベルリンで演奏させ、録音の上全世界に向けて放送してしまったのであります。
この曲はそれ以降も版権の問題も存在していることから、演奏も録音も多いとは言えません。なお、当日の演奏プログラムでは、「正確な記録は無いが、今回が関西初演の可能性がある」とのことでした。
さて、この曲についての評価なのですが、シューマンの後期を代表する作品とまでは言えないというのが一般的評価だと思います。特に、第3楽章ですか、私は今回の演奏でもシューマンの意図するところがさっぱり解からなかった、当惑を隠せないというのが正直なところであります。それでも、第1楽章、第2楽章は充分、シューマンのヴァイオリン協奏曲として立派なものだと思っています。
なお、シューマンは、ヴァイオリンの演奏技法にかかる基本的なことをあまり理解していなかったようで、シューネマンの校訂が無ければ到底不可能。シューネマンの校訂版でも、「ほんとうに大変なんだから」と漆原さん演奏会終了後、ふと漏らしておられました。
さて、この協奏曲のお薦め音盤について。
先ず、この協奏曲の初録音(たぶん)のクーレンカンプ盤は、根本的に録音があまりよろしくないのに加え、後年のクレーメルの演奏に比べると良く解かるのですが、かなりクーレンカンプ自身が手を加えてますね。この演奏は、ロマン派特有の暗い情緒が良く出ていてそれなりに素晴らしいのですが、初めてこの曲を聴く上では、この演奏お薦めできません。
やはり、第一にお薦めするのは、シューマンのヴァイオリン・ソナタの録音でもアルゲリッチと組んで素晴らしかったクレーメルの新盤(94年、指揮アーノンクール)ではないでしょうか。この演奏を聴いて、私はこの曲に対する評価が180度変わっちゃいました。細かい陰影と感情の起伏について、私が聴いた演奏の中で比類するものは皆無であります。鎌倉スイス日記のSchweizer_Musikさんが、この曲で、リバールとシュニーベルガーの演奏をお薦めになっておられます。私は、両者とも未聴。なお、Schweizer_Musikさんは、シェリング&ドラティの演奏について「味気ないといったら、もうさっぱり」とおっしゃっておられますが、全くの同感であります(笑)
シューマンのヴァイオリン協奏曲

