オルセー美術館展(1)夭折の天才フレデリック・バジール
2006年 10月 29日
オルセー美術館展
私はパリに在住していた際、ルーブル美術館とともにオルセー美術館に年間パスポートを持っており、夜間の開館時間を利用し、だいたい2週間に1度のペースで、オルセー美術館に足を運んだ結果、常設部分は、どこにどの作品があるか記憶するまでになっていたのですが、あくまでそれは常設作品のみで、オルセー美術館が所蔵する膨大な作品群の全てを見たというわけでもありません。
ですから、今回、展示された作品についても、なかには始めてみる作品もあったり、また見たことはあったとしても、違った視点で新たな発見があったりといろいろな収穫があったりました。
なかなか充実した展示内容です。
今回の私個人の収穫の一つは、フレデリック・バジール(1841-70)。わずか29歳で命を落としてしまうこの夭折の天才バジールのアトリエの絵やアンリ・ファンタン・ラトゥールがを描いた「バティニョールのアトリエ」にはバジールの精気溢れる姿が描かれているのですが、実際描かれているその年1870年に普仏戦争の戦線で命を落としてしまう彼の運命をこの絵の中の人物の誰が想像できたでしょうか。
下の絵は、ファンタン・ラトゥールの「バティニョールのアトリエ」ですが、右側のすらっとした若い紳士がバジールです。彼は、モンペリエの名門一族の出身でなかなかズボンなどもお洒落ですね。もともと貧しかったルノワールやモネに対して、財政的な支援も惜しまなかったそうですが、普仏戦争の際にも、彼の一族の資金力からすらば、お金を積むことにより、兵役を免除できたはずであり、兵役を逃れるだけの財政的余裕がなかったルノワールへの一種の友情から普仏戦争への従軍という選択枝を選んだといわれています。実際、モネは大金を積んで兵役から逃れています

なお、次の絵は、大阪市立美術館で開催された「南仏モンペリエ ファーブル美術館所蔵 魅惑の17-19世紀フランス絵画展」で展示されたバジールの「身づくろい(1870)」であります。この作品だけを見ても、彼の力量を知ることができるでしょう。


