ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調
2006年 06月 24日

五嶋龍さんの先日のリサイタルでのヴァイオリン・ソナタ第2番の演奏は、彼の若々しい演奏がわざわいし、ブラームスの内面を捉え切れていない感を持ちました。残念ながら、現在のところの彼の限界と課題があるのでしょう。
さて、ブラームスはヴァイオリンソナタ作品としては、3曲残されており、第1番は1879年に、第2番は1886年に、第3番は1888年に完成されましたが、第2番は、ほんとうに区切りの良い「作品100」であります。さて、それがどうしたと言われそうですが(笑)。
この第2番ソナタの特徴は、第1楽章のピアノ先導から始まって、ピアノが活躍するということでしょうか。どちらかというと、ピアノ:ヴァイオリン=6:4というところでしょうか。
第1楽章は、Allegro amabile(速く、愛らしく)で、冒頭から第1主題の旋律が、ピアノによって大胆に奏でられ、そしてヴァイオリンがピアノの旋律に相槌を打ち、すぐにまたピアノの旋律に戻ります。メロディーラインが長く、その間に他の楽器が応答するような形はブラームスの作品に多く見られますが、ここでもそうですね。この楽章では、第1主題自体が、ピアノによる第2主題の序奏の役割を果たしています。旋律は美しく、常に歌曲の風合いが漂います。最後は晴れ晴れしく終わります。
第2楽章はAndante tranquillo(やや遅く、静かに)で、叙情的なアンダンテとヴィヴァーチェが交互に現れ、あたかもフォークダンスのようであります。
第3楽章はAllegretto grazioso(quasi Andante)(やや速く、壮大に)で、冒頭からヴァイオリンが重厚な旋律を奏で、ピアノは和音とアルペジオで表情に厚みを加えています。終盤に向かって、徐々に盛り上がりを見せ、ヴァイオリンが重音で旋律を奏で、合唱の響きのようなヴァイオリンとピアノの和音でこの曲は終わります。心に重く浸透するような響きが胸に残る曲で、私個人的には、3つの彼のヴァイオリンソナタの楽章のなかで、この楽章が最も好みであります。
単純な旋律が多い故、深い理解力が要求される曲で、技巧を誇示した作品ではないだけ、最初に申し上げましたとおり、技巧だけで勝負するヴァイオリニストには、ちょっとつらい作品ですね。

五嶋 龍ヴァイオリン・リサイタル 2006 @兵庫県立芸術文化センター大ホール