権代敦彦:神戸空港のための音楽と音環境制作(建築家栗生明氏と)
2006年 01月 31日
■神戸空港のための音楽と音環境制作(建築家栗生明氏と)
[開港:'06 2月16日]

●私は、アンビエントミュージックが果たして音楽なのかよくわからないのですが、ともかくも彼が言うところの環境音楽は、音楽が周囲の雰囲気を積極的に定義付けるというシロモノで、その一例が記念碑と不可分の音楽でした。何らかのモニュメントとそこに流れる音楽が周囲の雰囲気を決定する。この音楽はその場所でしか聞くことができず、最初から記念碑の一部として作曲されるというものでありました。
●彼の環境音楽としての最初のアルバムで取り上げられたのが、1978年の「空港のための音楽」。文字通り、彼は空港という場所とその機能のために音楽を作曲したのでしたが、この音楽は実際にニューヨークのラガーディア空港で使用されているそうですね。音楽その物はミニマル・ミュージックそのまんまという手法による四曲のインストゥルメンタルからなります。ただ、音楽というよりは音素片のコラージュで、聴き手に強い心象の変化を起こさせるものではなく、ひたすら耳当たりの良いサウンドであります。イーノは「環境音楽とはどんな聴き方をも許容し、そこに居る人の環境を補う雰囲気を与える音楽である」と言っているそうですね。私には、こわばった心を癒す究極の癒し系音楽であります。
●権代敦彦氏の「神戸空港のための音楽と音環境制作(建築家栗生明氏と)」も、タイトルからしても、イーノを意識したものでしょうから、アンビエントミュージックのようなものなのでしょうね。
●ところで、イーノの「空港のための音楽」がラガーディア空港で使用されているのと同様、この音楽も神戸空港でずっと流されるのかな。気になるところです。
●なお、権代敦彦(ごんだい・あつひこ)氏のプロフィールは次のとおり。
権代敦彦(作曲家)

少年期にメシアンとバッハの音楽の強い影響のもとに作曲を始める。また、この頃欧米のキリスト教文化に触れ、高校卒業後にカトリックの洗礼を受ける。
桐朋学園大学音楽学部作曲科を経て、90年同大学研究科修了後、DAAD(ドイツ学術交流会/西ドイツ政府)奨学生として、フライブルク音楽大学現代音楽研究所に留学。
91年より(92年からは文化庁派遣芸術家在外研修員として)パリ・IRCAM(フランス国立音響音楽研究所)でコンピュータ音楽を研究、実践。
94年よりイタリアのチッタ・ディ・カステロ市の芸術奨学金を得て同地にて研修。
作曲を、末吉保雄、クラウス・フーバー、フィリップ・マヌリー、サルヴァトーレ・シャリーノに、オルガンをジグモント・サットマリーに師事。カトリック教会のオルガニストでもある。
現在、パリと東京を拠点に作曲活動を行っているほか、 演奏会の企画、プロデュースも熱心に行っており、95年~99年渋谷・ジァンジァンを基地に、現代音楽演奏団体「マニファクチユア」との共同作業によって「東京20世紀末音楽集団演奏シリーズ/→2001」を、97年~99年横浜県立音楽堂において「権代敦彦シリーズ・21世紀への音楽」をプロデユースした。