映画「博士の愛した数式」
2006年 01月 12日
これは純粋で美しい心を持つ人々が織り成す、温かくも美しい物語ですね。人生の苦み、悲しみに彩られていますが、主人公らのこころ優しさ、いたわりと慈しみの心が全編を覆い、満ち足りた静かな心持ちにさせてくれる映画であります。
まあ、もともと「本」の出来が良いこともあるのですが。
人と接することが苦手な博士は、「数」をきっかけに、会話を始めることを常としているのですが、一般人から見れば風変わりで、その言葉には奇妙なユーモアが漂うのであります。杏子の靴のサイズが24と聞き、「実に潔い数字だ。4の階乗(1×2×3×4)だ」と語るのであります。杏子の息子の頭がルート記号のように平らだからと、少年に「ルート」と名付けます。
邪心のない博士に触発されるように、杏子もルートも優しさで周囲を包む。そ
して、「目に見えぬもの」こそが本当に大切で、世界を支えているのだと知らされるのであります。
それにしても見方一つで、世界は何と「発見」と「驚き」に満ちていることなのでしょう。人と人、人とモノとの不思議な「関係性」。哲学者のようでもある博士の存在と言葉が、そのことを教えています。
●それから、この映画、音楽が良いのであります。誰が、担当しているか確認したら加古隆さんでした。彼は、もともとジャズ畑の人だったと思うのですが、ジャズのフィールドに限定されず絶えず素晴らしい音楽・音を紡ぎ出してこられましたが、この映画においても、「優しさ、美しさ」に満ち溢れた作品を作り出しておられます。