内藤明美:青柳ものがたり
2005年 10月 30日

簡単にストーリーを申し上げますと・・・
吹雪の中を旅する若き侍、友忠が、柳のかげの一軒屋に、一夜の宿を求める。
厚いもてなしを受けるが、一人の若い娘、青柳にめぐり合い、恋に落ちる。そして、二人して京へと旅立つ。
しかしながら、京都に着くなり、色好みの大名により、青柳は奪い去られる。友忠は、望みを漢詩に託し、青柳へ文を送るが、文は大名の手に落ちてしまう。
そして、大名は二人の愛の深さに打たれ、青柳は友忠のもとへと返される。
幸せな五年の年月後の朝、青柳は急に青ざめ、倒れてしまう。
「お別れ申さねばなりませぬ。わたくしはもともと、人間ではござりませぬ。私の魂は木。柳の木が私の命。私の元木を切り倒しておりまする。」
青柳の体は、陰も形もなくなり、消えうせる。
出家し、諸国を遍歴する友忠。
あるとき、青柳にであった家を訪ねると、そこには、柳の切り株が残っているるばかり。
ざっとこんな話。下手な作文で(冷や汗)、文学的価値は全く分かっていただけないと思いますので、是非とも小泉八雲の原作をお読みください。
さて、曲の方、「森の記憶」ですが、木のぬくもりと音色の深さに思わず心を奪われると言えばいいのでしょうか。それが、既に過去のものとなってしまった感のある日本の清い精神世界と出会い、散りばめられた和歌・漢詩と融合することにより、格調高さ、日本の美というものを表現しています。
私は内藤明美さんの作品は初めてお聴きするのですが、好感のもてる佳作でありました。
内藤明美さんプロフィール
桐朋大学卒。82年武井賞受賞。82年、88年のMusic Today入選。現在ニューヨーク在住。
98年、第1回コープランド賞を受賞し、コープランドが生前30年間住んだ家に、レジデント作曲家として居住。作品は、欧米、日本のフェスティバルやコンサートで演奏されている。