セルゲイ・プロコフィエフ:ピアノソナタ第9番ハ長調 作品103
2005年 09月 15日

彼の作品の特徴は、基本的には、調性感は失わないものの、トッカータ的な運動性を強くとり、反復的なリズムを使用することに特徴があると思うのですが、その典型的なものこそピアノソナタ第7番でありましょう。
ですから、積極的にこの9番を今まで積極的に聴いてこなかったのですが・・・
はじめて聴いてみて・・・良かったのであります。特に第4楽章の最後の方でしょうか。譜面にはこの部分に「遠くから」と記されているそうですが、静かな天井の響きと申しましょうか。一言でいえば「祈り」ですね。
作曲した1947年といえば、病気がちになり作曲活動が制限される少し前、晩年期よりやや前という時期、つまり、己の死を意識しはじめる時期だと認識するのですが、この「遠くから」とは、何を意味するのでしょうか。
プロコフィエフはこのピアノソナタ以外何も語ってくれません。
なお、このピアノソナタは作曲当時、32歳であったスヴァトスラフ・リヒテルに献呈され、4年後に初演されたのでありますが、このソビエト出身の大ピアニストは後年、次のとおり回想しています。大いに参考となるのではと存じますので転記いたします。

「ピアノソナタ第9番」は1947年に作曲、当時32歳だった
プロコフィエフは自分の誕生日に、ニコリナ・ゴラにある別荘に私(リヒテル)をはじめて招いてくれた。いきなり「君にあげる面白いものがあるんだ」と言い、第9ソナタの素描を見せた。「君のソナタになるんだよ・・・。大向こう受けするなんてことはくれぐれも考えないでくれたまえ。音楽院の大ホールを拍手の嵐でぐらつかせるような類の音楽ではないんだ。」
そして実際、最初眺めたときには、少し間の抜けた些細な作品に見えた。少々失望さえした。(中略)
1951年にプロコフィエフは60歳になった。誕生日にはまたもや病気だった。その前夜、「作曲家同盟」でコンサートがあった。彼は電話ごしにそれを聴いた。私が彼の第9ソナタを始めて引いたのはその折だった。それは加賀やしく、単純で、親密ですらある音楽である。・・・聴けば聴くほど好きになり、魅力に抗することができず、曲の完成度が見えてくる。私はこのソナタが限りなく好きだ。
ブリューノ・モンサンジョン著『リヒテル』より
私は、正直言って、リヒテルは得意ではないのですが、この曲に限っては、まずリヒテルの演奏に耳を傾けてみたいですね。