円山応挙の幽霊画(2)2枚の真筆
2005年 08月 20日

現在、円山応挙の筆による「幽霊画」と断定されうる作品は、海を渡って、米国カリフォルニア州のカリフォルニア大学バークレー美術館の所蔵となっているもの、そして、青森県弘前市の久遠寺が所有するもの、この2作品のみであります。バークレー美術館蔵のものが、応挙の落款が残されており、久遠寺のものは落款が入っておりませんが、ほとんど同じであるとのこと。
なお、東京の谷中三崎の全生庵に有名な三遊亭円朝の幽霊画のコレクションがありますが、このコレクションの中に円山応挙作と伝えられている「幽霊画」がありますね。私は、見たことがあります。ポーズや足の無いところなど、かなり真筆とされる2作品に近いのですが、これは、どうやら、真筆とされる作品を誰かが書き写したものらしいですね。やや、応挙らしい繊細さに欠け、表情もやや硬いかもしれません。でも、この作品、円山応挙の幽霊をコピーした作品の中では、応挙の真筆にかなり近いところまでいったものだとは思います。なかなか、素人目には分かり難いかもしれません。
そして、真贋の決め手は、この顔立ちにあるといわれています。鋭い切れ長の目ですね。
それにしても、ほとんどの幽霊画が、恐ろしい形相をしたもので、見る人をこわがらせるだけのものなのですが、さすがに応挙の幽霊は美しいですよね。カリフォニルア州に渡ってしまった幽霊画は、どんな経緯で日本を離れたのかは存じませんが、やはり、異なった宗教観、文化の中で、美しいと感じさせたのではないでしょうか。ひょっとして、幽霊画と知らないで購入したのかも知れません。
ところで、応挙の真髄といえば、彼の写生力でありましょう。幽霊は、実存しないものでありますが、ひょっとして、応挙は、本当の幽霊を見たのではと思わせるリアリティを感じさせます。彼の幽霊画には、そこから来るのでしょうか、恨みの表情で人を怖がらせるのではなく、また別の怖さを感じさせます。
応挙は幽霊ではありませんが、やはり実在しない伝説の美女を描いたことがあります。彼の美人画の代表作であります「江口の君」であります。描かれたのは平資盛の愛した女性で、能の舞台でも演じられる伝説の美女です。これも美しく、気品のある作品であります。実は、こういった実在しない女性を描くのに、彼は、中国の人相学を研究し取り入れたようであります。人の顔付きを研究することで人格や運命を見極める学問を、応挙は絵画の参考にしたのですね。陰険な目つきは悪党とし、切れ長の目は高貴な人として・・・。彼の写生帖には、人相学を研究した箇所が残っているとのことです。ふっくらとした唇と切れ長の目は、まさに高貴な女性の特徴でしたが、その手法であの幽霊を描いたようであります。薄く透き通るように引かれた絵具。あくまでも美しく、高貴に描かれた幽霊図の中で印象的なのが切れ長の「目」ですね。この絵のポイントは、この「目」でしょうか。
ところで、話は最初の戻ります。2枚の真筆ですが、どうして2枚あって、その1枚は米国に、そして落款の無い1枚は青森にあるのでしょうか。気になるところであります。

