科学と幻想の魔術師カレル・ゼーマン(1)
2005年 07月 23日
パイオニアから出ているDVD「カレル・ゼーマン作品集」を見る機会がありまして、「水玉の幻想」と「盗まれた飛行船」が収録されているのですが、それぞれ違った味わいがあり、チェコスロバキアのアニメーションの伝統と底力をあらためて感じましたね。
先ずは、カレル・ゼーマンについて。
1911年、チェコのコリーン市近くのオルトゥロンキ村で生まれ。幼年期をコリーン市で過ごした彼は、第一次世界大戦後に渡仏しフランス語を勉強する傍ら、樵(きこり)からボクサーまで、さまざまな職を転々とします。しかし、堕落したパリジャンに失望すると、ゼマンは帰郷し、モラヴィア地方のブルノ市でショーウィンドーをデザインするほか、後の世界的製靴メーカー、バチャ社経営の百貨店関連映画館の上映広告スライドを手がけます。第二次大戦中、チェコ・アニメーションの発祥地ズリーン市のクドゥロフ丘のスタジオに就職した彼は、1945年、最初の映画「クリスマスの夢」を撮影。また、以後、シリーズ化されるプロコウクさん(語呂合わせで、“見抜く人”という意味がある)の第1弾「幸せの蹄鉄」を1946年に発表します。
その後も、「水玉の幻想」('48)にガラスで出来た人形を登場させたのを始め、ヴェルヌに触発され新表現手段を用いて大ヒットしたSF映画「悪魔の発明」、コマ撮りと実写を合わせた「前世紀探検」などチェコならではのユーモアと斬新なアイデアの特撮技術は世界中の観客を驚かせました。その後、その作風を自在に変化させながら、映画製作を続けたゼマンは、国が自由化する直前の1989年春、78歳でこの世を去るのであります。その作品群はヴェネチア国際映画祭・青年少女部門大賞やカンヌ青年映画の集い・長編映画大賞など数多くの賞に輝いています。
さて、次は「水玉の幻想」について・・・