~160年前には日本一高かった五重塔がここにあった~ 華厳宗 元興寺
2019年 04月 30日

南都七大寺の1つであった元興寺。その昔、ほぼならまちエリア全体が元興寺でした。
今回取り上げるのは、ちょっと前まで(と言っても1977年前ですが)、「元興寺極楽坊」と呼ばれていた創建当時からの僧房の遺構が残る中院町所在の真言律宗の元興寺ではなく、芝新屋町にある華厳宗の元興寺です(もともとの元興寺を起原とする寺院は他に奈良市西新屋町に所在する真言律宗の小塔院があって、なかなかややこしいですが)。

こちらの元興寺には、奈良時代から残る創建遺構である五重塔の礎石があります。

寺伝によると一辺3丈(約9メートル)総高は24丈(約72メートル)で、東寺五重塔より大きいと伝えられる超大型塔があったとのことですが、1859年(安政6)に、観音堂などとともに焼失してしまい、現在まで再建されていません。なお、総高は実際には19丈程度(約57メートル)であったとされますが、それでも東寺の五重塔(54.8メートル)より高いことになります。
今は基壇と礎石を残すのみとなり、昔日の高い基壇上に聳える壮大華麗な五重塔を偲ぶしかありません。

基壇を覆いかぶさるように咲く立派な枝垂桜があって、それはそれは見事なのですが、既に花散らしの状態。

それでも、充分美しいと思います。
「滅びの美」ですかね。
眼を閉じて、悠久の歴史に身をゆだね、五重塔の在りし日の姿を心に刻むのもいいかもしれません。
(撮影:4月21日)

