
その「悲しみの花瓶」シリーズの一つがこれ、「蜻蛉文鶴頸扁瓶」です。
これは、1889年パリ万博にガレが出品して好評を博した一連の黒いガラス製品の中の代表作です。ガラスを黒く発色させ、陰うつな感じを持った素材を使った同じタイプの製品は、4年後にガレ自身により「悲しみの花瓶」と名づけられました。
この作品は、煙霧が立ちのぼる水面に向けて、羽根を乱して落下してゆく蜻蛉の姿を、グラヴェールで彫刻して表現しています。写真では判りにくいのですが、底部の黒褐色の層には水面に映る蜻蛉のシルエットが浅く彫り出されています。おそらく、「死」と死に直面し、死を自覚する瞬間を表現したかったのでしょう。

