たぶん、日本で最もユニークな老舗蕎麦屋 ちく満(ちくま)@大阪府堺市
2009年 10月 24日
さて、このお店、半端でないのは、その歴史だけではありません。とにかく、普通ではないのであります。
まず、この写真。

「なんだ、ごく普通の古風な老舗蕎麦屋の玄関じゃないの。」と思われるかもしれませんが、実は、トラディショナルな建物はごく一部。というか、全体的には工場の建屋。もっと、詳しく言うと、2つの工場に純和風の建物が挟まれているといった風情。どうしてこうなったんだろうと思っちゃいます(笑)。

そして、のれんをくぐると、番号札を渡され、その番号に従い、座席に案内されるという「合理的な」システム。つまり、強制的に場所をきめられちゃうのです。
今回は、2階の大広間の一番端の40番席に決定! お部屋もそのテーブルもなかなかいい風情ですが、どちらかというと1階のほうが好みかな。

そして、もちろん蕎麦もユニーク。メニューは蒸籠蕎麦(せいろそば)とお酒のみ。蕎麦は1斤、1斤半という、もう一つ分量がわからない、いささかアナクロっぽいものでオーダーするのですが、基本的に1人前は1斤半だということ。
こういう形で出てきます。

そして、蕎麦は、肉まんのようにせいろで蒸された温盛りの蒸篭(せいろ)蕎麦! つまり、熱い状態の蒸された蕎麦が蒸篭に入っています。それが次の写真。

そして、関西では、蕎麦つゆに生うずら玉子を溶いて蕎麦を食べることはしばしばあるのですが、このお店では温かい蕎麦つゆに、でかい生卵を溶いて蕎麦をいただくのです!まるで、ちょっと辛めの玉子のお吸い物です(笑)。

まあ、このお店に始めてこられる方、どうやって蕎麦を食べたらいいのか、ほとんどの方が戸惑われるのではないでしょうか。
そして蕎麦自体は、腰が全くなくて、ふんわりとした食感。お箸で取ろうとするとぷつぷつ切れちゃいます。いわゆる、普通のお蕎麦の喉越しや歯ごたえを楽しむ類の蕎麦ではありません。むしろ、柔らかく熱い蕎麦から立ち上る蕎麦の香りを楽しむといった感じでしょうね。
そして、蕎麦湯をお願いするとお店の方次のような錫製のものを持ってこられます。「かまくら」というものらしいのですが、漢字でどのような字を書くのか不明。

そして、蕎麦湯自体はちょうどいい按配。

とにかく、不思議なお蕎麦屋さんです。蕎麦自体は好き嫌いがはっきり分かれると思いますが、私自身は「これもありうるかな」という感じです。
まあ、蕎麦好みで「蕎麦道」を極めようとされる方は、是非ともトライしてみるべきでしょうね。
ちなみに、司馬遼太郎先生が、「街道を行く」で紀州街道を取材中、このお店に立ち寄ろうとしたところ、生憎「定休日」のため、残念ながらお蕎麦をいただけなかったというエピソードが「街道を行く」の堺・紀州街道編で紹介されています。
お店は、ちんちん電車の阪堺線宿院駅のすぐ近くなんですが、なにしろ、一見蕎麦屋に見えないということと、手前に結構広い駐車場があって、駐車場の中に蕎麦屋があるといった感じなので、見つけるのに案外苦労されるかもしれません。ご注意あれ(笑)。
そうそう、キャパは大きいのですが、結構込んでますので、お昼の時分時は避けた方が賢明かも。
◆ちく満
住所 : 堺市宿院町西1-1-16
TEL : 072-232-0093
営業時間 : 10時30分-21時
定休日 : 月曜(月曜日が休日の場合は翌日)
収容人員 : 100名