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ルーヴル美術館展 美の宮殿の子どもたち @国立国際美術館・大阪中之島

京都市立美術館で開催中のルーヴル美術館展 -17世紀ヨーロッパ絵画-はフェルメールの「レースを編む女」や、ラ・トゥールの「大工ヨゼフ」、ル・ナン兄弟の「農民の家族」、ベラスケスの「女王マルガリータ」、ハルスの「リュートを持つ道化師」などなど、ルーヴルの至宝中の至宝が多数出展されており、一度のみならず、二度、三度と足を運ぶ価値のある充実した内容となっています。

そういうわけで、大阪で開催中のもう一つのルーヴル美術館展 美の宮殿の子どもたち も、京都展と比較すると、どうしても・・・という感は否めないものの、それでも、シャルダンの「食前の祈り」は、彼の代表作の1点で、これを見逃すわけにはいかない傑作でしょうし、その他、オスターデの「学校の先生」、リシャールの「赤頭巾」のほか、ティツアーノ、ベラスケス等々の絵画作品や素描など、全作品、ルーヴル美術館からの作品だけあって、極めてレベルが高いところ、美術愛好家のみならず、足を運ぶ価値のある内容となっています。

更に、絵画作品のみならず、エジプト美術や、彫刻作品、エマイユ、ゴブランなどの工芸品などの展示も充実しておりますので、ヴァリエーションと、「子どもたち」をキーワードにしたという企画面で、見方によっては、大阪のルーヴル展の方が楽しめるかもしれません。


さて、印象に残った作品は次のとおり、

アドリアーン・ファン・オスターデ
《学校の先生》1662年
オスターデは、フランスものに比べると親しまれているとは言いがたいオランダ絵画ということもあり、認知度といったものは決して高いとは言えないのですが、この作品は彼の代表作の一つにして、極めて質の高いものである由、これを契機に彼の評価、認識が高まらないか、密かに期待しているのであります(笑)。
おそらく、子どもの顔が妙に老けていて、子どもらしくないといったところ、彼の人気が今一つである理由があるかもしれません。それでも、光の捉え方が絶妙なところなど、充分留意して見ていただきたい作品であります。 

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ジャン・シメオン・シャルダン
《食前の祈り》1740年頃 油彩、カンヴァス

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何を隠そう、私が2年間のパリ在住時代、足繁くルーヴルに通ったのですが、広いルーヴル館内を歩いていて、何度か、この絵を見たいという衝動をいだくことがありました。何度、私はこの絵で心を癒されたことでしょう。
「食前の祈り」という題材は決して珍しいものではなく、民衆階級の健全な美徳を表す風俗画の一つであることには間違いないのですが、そんな学術的な分類などどうでも良いと思わされる作品の完成度、そして何気ない日常の中に、母親や家族の愛情と画家自身の優しい眼差しが感じとられる点など、魅かれるところは、この絵画の中に、数多く詰まっております。あまりにもさりげなく、この作品が展示されていることからか、立ち止まってじっくり見る人もそう多くないように思われたのが残念。柔和な光と物静かで優しい空気感、落ち着いた色彩描写など、もっとじっくり味わって欲しいですね。

ジャン=バティスト・ルイ・ロマン
《無垢》大理石
私は、ロダン以降のフランス彫刻も素晴らしいと思いますが、ロダン以前のフランス彫刻も同様、素晴らしいものがあり、我が国の評価はあまりにも不当だと感じております。
たとえば、ジャン=バティスト・ルイ・ロマン作の「無垢」という作品。柔らかな面差しが心に残るこの作品の背中の美しいこと。見逃さないでください。

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フルリー=フランソワ・リシャール
《小さな赤頭巾》・フランソワ・リシャール 「小さな赤頭巾」 油彩
フランソワ・リシャールという画家も、「小さな赤頭巾」と題された作品も、それほど著名な作品ではなく、どちらかというと、ルーヴル美術館通の間で知られている、知る人ぞ知る「珍品」として、取り扱われていたように思われます。
赤頭巾という童話の世界の1ページが極めてリアルに描かれています。今より、ずっと、子ども時代に、天に召されることも多かった時代、残忍な動物「狼」の危険性に気づかないで狼に近づいてしまう「無垢さ」と「死」が隣り合わせにあったということを認識しつつ、改めてこの絵を眺め見ることができたのですが、なるほど、単に「童話の1シーン」を切り取っただけの作品ではないなと今回、思い知った次第。

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フランソワ=ユベール・ドルエ
《三角帽をかぶった子ども》油彩、紙、楕円形のカンヴァスで裏打ち

ドルエという画家は存知あげないのですが、この作品に見る彼の力量はタダモノではないこと充分おしはかることができます。この子どもの眼差し。ゾクゾクっとしました。

ルイ・ル・ナン、もしくはアントワーヌ・ル・ナン
《幸福な家族(旧名称:洗礼からの帰宅)》1642年 油彩、カンヴァス
ル・ナン兄弟の作品はそれほど多く残っていない(?)と思うのですが、それほど「幸福」そうには思えないのは私だけかな。京都のルーヴル展で出展されているル・ナン兄弟の「農家の肖像」と同じ類型に位置するものなんでしょうが、やはり、「農家の肖像」の方により魅力を感じてしまうのですが・・・。
それでも、不思議な魅力を持った作品であることは間違いありません。

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ジョシュア・レノルズ
《マスター・ヘア》1788年 油彩、カンヴァス
ジョシュア・レノルズは、単なる肖像画家だというのが、私の個人的評価。そのあたり、レンブラントあたりと雲泥の差だと思うのですが(比べること自体レンブラントに失礼かも)、それでも、職業画家として、この作品、彼の力量の一端を垣間見ることができると思います。

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カミーユ・コロー
《幼いモーリス・ロベール》1857年4月12日 油彩、カンヴァス
コローの肖像画というと、ついこの間、日本にも来た「真珠の女」がありまりにも有名ですが、それ以外、あまり肖像画は残されていないなか、この子どもの肖像は極めて珍しいのではないでしょうか。女の子の服を着た男の子ということですから、上流階級の子どもの肖像ですね。それにしても、子どもの服の色が、彼の風景画でも特徴的なコローならではの緑褐色のトーンであるのが興味深いところ。

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ディエゴ・ベラスケスと工房
《フランス王妃マリー=テレーズの幼き日の肖像》1652-1654年 油彩、カンヴァス
スペインの天才宮廷画家ベラスケスの作品。決して悪くはなく、それなりに素晴らしい作品だと思うのですが、ルーヴル美術館には、桁外れに素晴らしい彼の作品が所蔵されている由、この絵を見て、決して「こんなものか」とは思わないでください。

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ペーテル・パウル・ルーベンス
《子どもの習作》1620年頃 黒チョーク、白チョークの線描;透かし模様
単なる習作として侮ることなかれ。彼の力量がこれだけ見ても理解できるのではないでしょうか。

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アントワーヌ・ヴァトー
《ジルの顔と少女たちの習作》サンギーヌ、黒チョークと白チョークの線描、ベージュ色の紙
ヴァトーには、当時有名な道化師であった「ジル」を描いた有名な作品があり、個人的にも物憂げな「ジル」は私の最愛の作品の一つであるところ、このような習作を見ることができたのは、この美術展の私個人的な成果の一つでありました。

ティツィアーノ
《聖母子とステパノ、聖ヒエロニムス、聖マウリティウス》 1517頃
見よ、そして感じよ。何も付け加える言葉はありません。

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ブーシェ《アモールの標的》
 油彩 1758年
本展の最後を飾る作品なのですが、これが下絵とは思われない見事な大作。ロココはあまり好みとは言えないのですが、それでも、凄いと思わせるところはありますね。

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◇ルーヴル美術館展 美の宮殿の子どもたち
会期:2009年6月23日(火)―9月23日(水・祝)
開館時間:午前10時-午後5時、金曜日は午後7時まで(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(ただし、7月20日(月・祝)は開館、翌21日(火)は休館、9月21日(月・祝)は開館)
会場:国立国際美術館(大阪市北区中之島4-2-55)
by tetsuwanco | 2009-07-19 09:38 | アート

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by てつわんこ
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