ベルリンの至宝展(7)アーノルト・ベックリン:死神のいる自画像(その1)

ベルリンの至宝展(7)アーノルト・ベックリン:死神のいる自画像(その1)_b0063958_22334828.jpg

               ↑ベックリン「死神のいる自画像」

この美術展の主催者によるHP上のこの絵についての解説には、次のとおり書かれています。

「画家は絵筆とパレットを手に、耳を澄ましながら仕事の手を休めている。背後には骸骨で表現された死神が立ち、物思いに誘うような旋律を、ヴァイオリンに残った最後の弦で奏でている。・・・画家は死神が姿を現したことに驚いているのではない。この近さをかわそうとするのではなく、呼びかけに耳をそばだてているのだ。見たところ、この死神は作家人生の敵ではない。むしろここでは、実りをもたらす一瞬が表現されている。耳をそばだてて全てがとまっているこの瞬間は、インスピレーションの瞬間でもある・・・・」

私は、この解説、概ね正しいと思うのですが、ちょっと違うのではと思うところがあるのです。

それは、この絵に描かれているのは、決して死神では無いということであります。

骸骨と言いますと誰しもが思い浮かべる一つに、三日月形の大きな鎌を手に持ち、黒いマントを羽織ったりする骸骨姿のいわゆる「死神」があると思います。ベックリンの代表作の一つに「ペスト」という作品がありますが、この絵で登場するのは「死神」、まさしく、人々に死をもたらす存在、あるいはもたらすものの象徴であります。

ベルリンの至宝展(7)アーノルト・ベックリン:死神のいる自画像(その1)_b0063958_22342062.jpg

                ↑ベックリン「ペスト」

ちょっと難しいのですが、ヨーロッパには、「死の勝利」や「死の凱旋」と分類されるもの(ベックリンの「ペスト」はまさしくこれですね。)と、「死の舞踏」と言われるものがあるのですが、この「自画像」は後者に分類されるんじゃないかなと・・・・。そして、それが、度々混同されているのであります。

もし、この絵に描かれているのが「死神」だとすると、この絵は、ただの気持ちの悪い絵に過ぎなくなってしまいます。

この話は長くなります。次回に「死の舞踏」そのものについて書いてみます。「死の舞踏」という概念の理解無しには、このベックリンの自画像の真の理解は得られないと思いますので・・
by tetsuwanco | 2005-08-13 22:35 | アート

京阪神の地域密着情報を中心に情報提供します


by てつわんこ
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31