エミール・ガレ(1):北斎とガレとドビュッシーと
2005年 05月 08日
その収穫のうちの一つが、北澤美術館所蔵の「双魚形花器」を見ることができたことであります。この作品に描かれた魚の絵柄は、ジャポニズム関連のモティーフとして有名であるのですが、これは葛飾北斎の「北斎漫画第13編」の「魚濫観世音図」からの引用であります。元の絵は小布施の北斎館で見ることが出来ます。
ところで、クロード・ドビュッシーの「映像」をご存知でしょうか。ドビュッシーはこの「映像」の第2集第3曲「金色の魚」を、日本の漆器に描かれた金色の鯉にヒントを得て書いたと伝えられています。私は、この魚は、ガレ同様、北斎漫画の中の「魚濫観世音図」から観音様を除いたモティーフではないかと思っております。というのは、「北斎漫画」がパリ万博で広く紹介され、評判を得ていたこと、更にガレがこのモティーフを取り上げていたことから、おそらく最も可能性が高いと考えられるからであります。ドビュッシーは、仕事部屋に「海」のスコアの 表紙にも使われた北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を飾っていたことからも、パリ万博で評判となった「北斎漫画」の「魚濫観世音図」をおそらく目にしていたはずです。それにパリの万博において、ロシア、アジア音楽から大きな影響を得たというのはご存知でしょう。
おそらく、北斎は、遠いフランスの偉大な芸術家達に影響を与えるなんて一つも考えなかったでしょうが、彼の洒脱な「北斎漫画」を眺めているととても愉快な気持ちになります。