~フィンセントとテオ、2枚の肖像画~ ゴッホ展「空白のパリを追う」@京都市美術館


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一般的にゴッホの傑作というと、アルル時代と最晩年のオーヴェル=シュル・オワーズに傑作・代表作が集中しているというのが通説でしょう。

ですから、パリ時代の作品というと、有名な作品では、パリのロダン美術館所蔵の「タンギー爺さん」や、ジャパネスクに傾注し、浮世絵を模索した「おいらん(栄泉を模して)」、「ジャポネズリー:梅の開花(広重を模して)」ぐらいしか思いつきません。また、同時代のラパン・アジル、ムーランド・ギャレットなどモンマルトルを描いた風景画なども、強烈な個性や色彩に彩られたアルルやオーヴェル時代と比べると地味な取り扱いをされています。

今回のゴッホ展は、「空白のパリを追う」という副題がついているとおり、そのようなパリ時代の作品が中心で、いかにもゴッホという作品や有名な作品を見たいという人には、今回のゴッホ展は向いていないかもしれません。

でも、後年の孤高の作品に辿り着くに至る上で、このパリ時代がどのような意味を持つのか、このパリ時代を振り返って見るのは決して意味の無いことではないでしょう。

オランダのニューネンでの作品に比べ、明るい色彩を帯び、大きく変貌を遂げたゴッホ。芸術の都パリにおいて他の様々画家からの影響を受け、苦しみながらも様々な手法を模索してきたゴッホの姿が浮き上がってくるのではないでしょうか。

この時代に接することのできた浮世絵などの日本文化の影響もご存知のとおり(ジャポネスク的色彩の強い作品ももう少し展示してもらえたらなあなんて思っていますが。)。

また、最後の最後で展示されていましたが、「石膏彫刻のトルソー」も地味ですが重要作品のっ一つですよ。

そして、今回のゴッホ展の特徴にも挙げられると思うのですが、肖像画が多いこと。残念ながら、ゴーギャンとの事件発生後の「パイプをくわえた包帯をした自画像」のように衝撃的な作品はありませんでしたが、私は、今回テオの肖像画と判明したものと対になっていたサムホールほどの小作品が特に印象に残りました。

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↑自画像 1987年夏

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↑テオ・ファン・ゴッホの肖像 1987年夏

これは大きさやテオやゴッホ自身のポートレイト的な作品で、けっして売るがための作品ではなく、遠く離れたオランダの地にいたテオの奥さんハンナのために描いたのではないかと勝手に思っています。

この2枚のフィンセントとテオの2枚の肖像画は、ハンナさんのベッドルームの壁に掛けられていたりして。

ゴッホ美術館所蔵作品のほとんどが、テオとハンナ所有作品であった訳ですので、全くの空想の産物とは言えないと思っています。

ゴッホがどんな気持ちでこの小さな肖像画を描いたのか。そして、ハンナがどんな気持ちでこの2枚の肖像画を眺めていたのか。

この絵を見て、フィンセント、テオ、そしてハンナの強い絆をついつい感じてしまうのであります。

ゴッホ展の京都市美術館での開催は5月19日(日)までですのでご注意!

京都展の後、宮城県(5月26日~7月15日、宮城県美術館)、広島県(7月22日~9月23日、広島県立美術館)でも巡回開催されるようです。
by tetsuwanco | 2013-05-16 20:38 | アート

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by てつわんこ
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