正倉院正倉整備工事第2回現場公開に行ってきた ~恐るべし、天平の甍~
2012年 09月 26日
その数々の宝物はシルクロードの文化を今に伝える国宝以上の名宝として、毎年秋の正倉院展で私たちを楽しませてくれますが、その品々が収められていたのが「正倉院正倉」です。
戦後、新しく近代的な宝庫が完成したことを受けて、正倉にあった宝物は、一部を除いて全部取り出され、現在では、空調設備のある西宝庫、東宝庫が宝物の収納・保存の役割を担っています。
以外に思ったのが、国宝に指定されたのが、平成9年だということ。比較的最近なのですね。その翌年には、世界遺産にも登録されているのですが、傷みが激しくなってきたため、100年ぶりに解体修理が行われています。
その特別見学会(9月22日~23日)に、正倉院を管理している宮内庁を通じて申し込んだところ幸運にも当選となりまして、22日の朝9時に足を運んで参りました。
普通では決して見ることの出来ないところ・距離からの見学であり、熱烈な歴史ファンとは決して言えない私にも、興味深く拝見させていただきました。
工事自体は、正倉を工事中の風雨から守り、作業の足場となる「素屋根」の建設が平成23年10月から始まりました。基礎コンクリートの打設、鉄骨の組立を経て、翌24年2月下旬に完成。
その後、正倉本体の整備工事が開始され、5月から6月にかけて瓦を降ろし、また、屋根の一部を開き、現状の小屋根の収まりを確認。
現在は、降ろした瓦や建物各所の調査を行なっており、これから本格的に建物の補強工事を開始するところ。
素屋根の中に入ると・・・
まずは床下。高床になっています。その上の「校倉造」もはっきりと見て取れます。
こんな間近で見るなんてもちろん初めて。
素屋根の階段を上ると・・・
南倉の扉。
中倉の扉。
威厳を感じる扉ですが、かつてはこうして勅封がされていました。。
さらに順路を進むと・・・
北倉の扉が開けられ、内部を見ることができます。階段や柱の一部は100年前の修理で造り替えられていますが、内部を見られるとは思いませんでした。
そして、更に順路を進み屋根へと出てみます。
今回の特別公開では、屋根瓦が全て下ろされた状態ですが、よく見ると結構傷んでいるのがわかります。
正倉の屋根に葺かれた瓦は、何度も行われた修理の歴史を物語るように、様々な特徴のものが混在していたとのこと。
正倉の屋根に各時代の瓦が葺かれていたということは、古い瓦を大事に再利用してきた証でもあります。
今回の修理においても、再利用できる瓦は極力屋根瓦として葺き直すことを最優先するものの、残念ながら割れて使えない瓦も多く、今回は半数以上を新たに製作することになったとか。なにやら、天平時代の瓦より、大正時代の瓦のほうが傷みが激しかったということ。
100年前に修理をしたときに瓦を一部葺き替えているのですが、専門家によると「大正時代の瓦のほうが焼きが甘く、瓦を葺く技術も劣っていた」ことが原因と考えられるそうです。
恐るべし、天平の甍!
日頃、技術力の日本とか言われており、時代が進むにつれて発展、進歩していると思いがちですが、実は昔のほうがはるかに優れていたなんて・・・先人たちの知恵や技術に驚かされました。
鬼瓦も迫力満点ですが、時代によって違いがあってなかなか興味深いですね。
見学の終わりに外に目をやると、大仏殿も向こうに見えます。
こんな素晴らしい眺めも今回限りの貴重なもの。
手前に見える小さな蔵は聖語蔵と呼ばれる建物で、かつては経典類が収められてい建物だとか。