正倉院展だけではもったいない奈良国立博物館
実を申し上げると、毎年恒例の秋の奈良の風物詩ともなっている正倉院展よりも、同じく奈良の国立博物館で開催されている旧館(なら仏像館)の展示の方が、中身が濃くて充実していると思っています。そんな風に感じているのは私だけかな。



飛鳥時代から鎌倉時代に至る仏像彫刻を中心に、そのほとんどが、国宝、重要文化財。しかも、通常、お寺で見る仏像は、お堂の中では薄暗いことや、遠いところに設置ずらいことから、信仰の対象云々は別にして、到底鑑賞に適しているとは言えないのに対し、おそらく最高の状態で優れた仏教芸術の結晶ともいえる「作品群」をじっくりと目の当たりできるのであります。それも、正倉院展のチケットで無料でですよ。

元興寺の国宝、木造薬師如来立像や、薬師寺の同じく国宝の木造八万三神坐像も必見なのですが、何よりも素晴らしいのは第3室の特別公開の東大寺法華堂の金剛力士像二体(国宝)でしょう。もともと、法華堂の暗くて遠いところに、しかも見る角度も限定されているのですが、今回の展示だと、照明もうまく当てられていて、彩色も実に良くわかりますし、その迫力たるや、すばらしいものがあります。法華堂のなかのそうそうたるラインナップからは二体だけですが、改めて、法華堂に収められた仏像群の素晴らしさを認識することができました。その静と動の対比も鮮やかで、険しい眼と憤怒の表情、特に吽形の像が内に持つエネルギーのすさまじさは、見事としか言いようがありません。

大抵の人が正倉院展を見て、記念のグッズをお土産に買うのに時間を費やしているように見受けられますが、なら仏像館の展示を見ずに帰ってしまうのは、本当にもったいない話ですよ。あれだけ長い間並んだのですから(笑)。

そして、もう一つ、建物そのものも忘れてしまってはいけません。

というのも、なら仏像館(本館)は、明治27年(1894)に完成した煉瓦造りの建物で、設計は、旧赤坂迎賓館の建築でも名高い片山東熊(かたやまとうくま・1854-1917)によるものであるから。



フレンチルネサンス高揚期の様式をとっているとのことですが、玄関まわりの装飾は意匠的にすぐれ、明治中期の欧風建築として日本を代表するもので、旧帝国奈良博物館本館」として重要文化財に指定)されています。







なお、内装については、建物内の休憩室で重厚な雰囲気を味わうことができます。





言い換えれば、この休憩室でしか、その歴史的建造物としての重厚さを味あうことができないということなのですが・・・。





ここもただ、通過するだけでは実にもったいない話。



おそらく、休憩室としては、日本の美術館の最も美しいと言っても過言ではないでしょう。

実は、それ以外にも、森鴎外の門などもあって・・・全くもって正倉院展だけ見て帰ってしまってはもったいない奈良国立博物館なのでありました。
by tetsuwanco | 2010-11-03 04:28 | ちょっと遠出 | Trackback | Comments(1)
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Commented by ドミンゴミヤケ at 2011-11-10 12:16 x
正倉院展の見学の他に、散策の指南まで頂き参考にします。
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